学習障害と、その例について前回少し紹介してきました。そこで、今回は学習障害の子どもの支援について考えていきたいと思います。
前回紹介した「書字障害」の子どもについて少し深く考えていきます。
まず、「障害」と聞くと、「病気」と混同したり、同一視したりしがちです。しかし、障害と病気は別のものだと考えられています。病気は何もない状態から発生しますし、治療によって治すことができます。しかし、「障害」は基本的には(多くの場合は)生まれ持ったものであり、治療によって完治することは考えにくいです。
かつて、新米教員時代に私はあるアスペルガー症候群の疑いのある生徒の担任をしていたことがありました。不登校傾向があったのもあり、面談や電話で、保護者からその障害の話をよく聞いていました。それにもかかわらず、私は会話の中で、「〇〇さんの病気は、」などと頻繁に言ってしまっていたことを、後年、後悔と反省しています。保護者はどのような気持ちだったことでしょうか。
さて、書字障害の子供は基本的に知的発達の遅れはありません。しかし、他の発達障害ももっていることが多いです。(ADHD、自閉症スペクトラム障害など)そのため、それらの障害特性も考慮した支援が実際には必要になってきます。
ここでは「書字障害」に絞って話をしていきます。
まずは、その子どものアセスメントが必要です。授業中や休み時間にその子どもをよく観察します。その子の特性や困っていること、困っている場面を正確にできるだけたくさん把握します。保護者や本人、学級担任との面談を通して、「困り感」の調査や把握をします。現在の学級や家庭での支援方法も聞き出します。
それを特別支援教室の同僚とのケース会議で報告し、支援内容や計画を話し合います。そして、学級担任と協力して連携型個別支援計画を作成します。それを保護者や学校長に見せ、確認をとります。
そして、いよいよ支援が始まります。
その子どもの書字障害の原因に従って、適切な支援方法を選びます。例えば、字形を正しくとらえることができない子供には、「コグトレ」という視覚認知機能向上の教材を使用します。ビジョントレーニングも有効の場合もあります。
部首を記憶することが苦手な子どもには、耳から入る音声を手掛かりにした学習を提案します。例えば、有名な例ですが「親」という漢字が正確に記憶できない場合は、声に出して、「親は木の上に立ってじっと見てるよ。」など、苦手は視覚以外の機能である聴覚の助けで学習します。
また、手指や肩や腕の筋肉を上手に使うことが苦手でうまく書けない場合もあります。その場合は、ストレッチ運動や「空字」の学習をしたり、合理的配慮として、その子ども専用の大きいマス目のプリントを作成して通常の学級で使用させることもあります。
以上はあくまでも典型的な例にすぎません。実際には個人に合わせて様々な支援が行われています。