放課後等デイサービス事業所数の急激な伸びによって、支援を必要とする子どもやその家族はその恩恵を享受することができ、より高度な成熟した福祉国家への道を昨今の日本は歩んでいます。
現在、障害児通所支援事業がより身近になったことは、障害児に関わっている人間としてとても喜ばしいことです。しかしながら、事業所数と通所児童の激増によって国庫からの公金の障害児通所支援分野への分配が今後怪しくなっているのも事実です。介護・障害分野の中でも、「放課後等デイサービス・児童発達支援」の分野だけが急激な増加をたどっています。また、他の分野に比べて統計上、放デイや自発支の利益率が非常に高いことも当局や関係者から問題視されています。今後、放デイの報酬は上がる見込みはないでしょうし、下がっていく方向であることは確実と言えます。じわじわと下がっていくか、急激に下がっていくかのどちらかと言えます。
一方で、昨今では休業や廃業に追い込まれる事業所も相当数出てきています。近年の統計では、廃業に追い込まれた原因は「児童の獲得が困難だったから」という理由よりも多い廃業の理由が明らかになっています。その理由こそ、「必要な人員基準を満たすことができなくなったから」です。
経営者は放デイの事業を継続させたくても、「人」が辞めていく、募集をかけても「人」が集まらない、といった現象が地方や郊外だけではなく、都心部でももう既に起こり始めています。放デイなどの「指定福祉事業」は他の多くの民間の事業とビジュネルモデルの違い(大きなリスク)はここにあります。他の事業ならば、人員基準というものがないか、それほど厳しくないため、現代の人手不足の中で離職防止や採用の苦労はあっても、広く継続的に良い募集をかければ「人」は集まります。しかし、放デイの人員基準はとても厳しいため、有資格者の人員確保はとても厳しいのが現状です。
特に、保育士は放デイでは非常に需要が高い職種です。しかし、近年、保育士の採用に苦労している事業者はたくさんいます。実際、保育士になろうとする人の中で、「障害児分野」に興味があり、障害児施設で働きたいと考える人は決して多くはありません。ですから、力を入れて募集をしても、よっぽど効果的な募集がかけられたとか、運が良かったでない限り、採用に苦戦する事業所も実際に多いのではないでしょうか。(資格などの人員基準が厳しいために、介護分野のように、近隣諸国からの労働力に頼ることがほとんどできないのは放デイ経営の難しいところです。)
以上のように、放デイの採用は困難です。今後も一層厳しさは増すでしょう。ですから、経営者のみなさまは、人員を採用したら一日でも長く働いてもらうよう努めなければなりません。離職を防止することが今後の放デイ経営の肝になってくるのは確実です。
離職防止には「賃金アップ」も必要でしょう。しかし、賃金アップに頼るのも危ういものです。というのは、自分が働いている事業所よりも、より賃金の高い事業所は周囲に必ず存在するからです。いたちごっこに陥る危険性すらあります。(また、賃金アップがベーズアップの場合、経営に大きく影響してしまいます。)
賃金アップは実際ある程度は必要な方法ではあることは認めざるをえませんが、それよりももっと離職防止に効果的な方法があります。
それは、「職員がスキルアップでき、やりがいのある魅力的な職場」を経営者の方が作っていくことです。
採用される職員の半数以上は、「障害児」に対する理解や支援経験もないか、とても乏しいと思います。初めは、障害児の行動がわからなかったり、思うような支援や指導ができずとても悩むことと思います。周囲に高いスキルのある同僚がいなければ、悩みを同僚に打ち明けられず、どんどん働くのが辛くなっていきます。同僚の後ろ姿を見て学ぶこともできない、同僚にも悩みを打ち明けられない、これでは働き続けたいと思うはずはありません。
職員が自己の支援や指導方法をブラッシュアップし、スキルアップしていくことは、本人の大きな喜びでもあると同時に、「働きがい」を実感することができます。これこそが離職防止の要です。
では、「職員がスキルアップでき、やりがいのある魅力的な職場」を作っていくには、『充実した研修』の実施こそが最も効果的です。良い研修が定期的に頻繁に行われている職場は間違いなく「良い職場」になります。職員全体のスキルがアップするのは確実ですし、研修後はほとんどの人間は仕事へのモチベーションが一定程度継続するからです。モチベーションの高い事業所は「良い療育」を子どもに提供するでしょうし、保護者に対しても「良い対応」をするでしょう。そして、何よりも、十分な研修が行われている事業所は、「療育」という仕事へ多くの視点が向くために、よりよい療育をするために、同僚と協働して切磋琢磨していきます。そのような前向きで高いスキルをもった職員ばかりの状態になると、職場の人間関係で辞めていくというケースも無くなっていきます。
事業所全体で見ても、今後、充実した十分な研修を実施している事業所と、そうでない事業所は間違いなく「天と地」ほども差がついていきます。この厳しい状況でどちらのタイプの事業所が生き残っていけるか、それはもちろん前者の「研修」に重きを置いている事業所です。
今後の放デイの生き残りの方法はもちろんいくるかあります。しかし、充実した十分な「研修」こそが最も効果的で、その教室に集う全ての人々にとってハッピーでWINーWINな状況を作ることができる方法と言えます。
横山大輔行政書士事務所ホームページ – 放デイ専門 行政書士 (放課後等デイサービス) (daisukeoffice.com)