前回は、放デイ経営のメリットやデメリットの話をしてきました。
今回は、今後の放デイ経営で必須となる「大型化」によって得られるメリットについて話をします。(その前に放デイのデメリットについてだけ復習させてください。)
放デイ経営のデメリットには、
①法令や行政による基準の厳しさ(人的)
②法令や行政による基準の厳しさ(物的)
③大幅な売り上げアップが望めないため、借り入れの返済が他の事業よりも時間がかかる。
④3年ごとの法令改正による影響を強く受ける。
⑤実地指導や監査による返金命令や営業停止、指定取り消しのリスク
がありましたが、これらのデメリットのリスクを軽減する方法は存在します。それが「大型化」と、それと深く関係する「効率化」です。
事業所を増やしていき大型化していくことで、上記①~⑤のデメリットの対策になる理由を書いていきます。今回は①について経営上の人材面での問題について幅広い視点から書いていきます。
①法令や行政による基準の厳しさ(人的)
→ (大型化にしていくべき理由)
1.人材不足時に対応できる。(廃業・休業・減算・実地指導・監査のリスクへの対応可能)
もしもA事業所でギリギリの人員で経営している場合、突然の欠勤や退職によって基準人員に達しなくなることは十分考えられます。殆どが公金でまかなわれている放デイでは人員基準は厳格です。多くの事業所がある法人であれば、その内部の人員を異動させたり、応援に行かせたりすることで適宜、緊急の事態に対応しやすくなります。実際、当日の朝の欠勤連絡を受けた後でも対応可能なのはとても魅力的です。(ただし、指定権者への職員の届出は必須です。各自治体独自の人員基準解釈に沿った運営も必要です。)ポイントは、このような運営をするには、ある程度職員の方が移動しやすい立地内にそれらの事業所を設立していくことです。
2.人材確保が有利
人材確保の面で、欠員が出てから募集をかけるのでは遅すぎます。この人出不足の中ではすぐに応募→採用というのは現実問題厳しいです。そこで、単一の事業所での採用募集よりも、大規模の事業者であれば欠員が出る出ないにかかわらず、常に採用募集をかけることができます。そうすることで、候補者が常にいることになって人員面でのリスクを軽減させます。
3.能力に応じた人員体制の構築がしやすい。
例えば、B事業所の職員の年齢が若すぎたり、経験が乏しい場合で、核になって指導する職員が不在ということもあります。そのような時に、B事業所と他事業所の人事異動によって、事業所間の人員のスキルや経験のバランスをとることができます。人を教育していくには、多くの指導者の支援が必要ですが、指導者の年代のバランスがいいことも放デイ運営上も、教育上も、運営上もとても大きなメリットとなります。
4.各事業所の利用者や保護者の実態に合った人員配置がしやすい。
今後は放デイは「専門的支援加算」を効率的にとって運営していくことが必須となります。ただ、その専門支援のスタッフが、理学療法士だったり、言語聴覚士だったり、保育士だったり、公認心理師だったり、いろいろな職種が考えられます。各事業所で、その専門の方を雇うことで差別化していくことはとても有効な運営だと思います。しかし、地域や、通所児童の実態、年数の経過によって、利用者や保護者のニーズは常に変化していきます。その場合、その専門のスタッフを雇い続けることが実態に合わないことも考えられます。
運営上、利用者や保護者のニーズを常に正しく察知して、そのニーズに適切に対応していくために、大規模な組織であれば、小規模の組織よりも専門支援職員の人員の配置の融通が利きやすいメリットがあります。
5.離職率を軽減できる。
職場の人数が少ないほど、より濃厚な人間関係が要求されます。どんな人でも「合う人」、「合う職場」というものがあります。実際、人間関係が原因で退職に至るケースはいつの時代にも一定数います。この問題にも、複数の事業所を有している組織であれば、単一事業所よりも対応がしやすくなり、離職の防止効果があります。また、適度で効果的な人事交流や、組織全体でのイベントや研修なども効果的に用意することで、事業所内の良い人的新陳代謝の効果が生じ、人間関係による離職防止につながっていくことが考えられます。