自動車運送業分野における特定技能外国人受入れ運用要領から、ポイントを解説します。
自動車運送業分野における特定技能外国人受入れは、慢性的な人材不足を補うために制度化されました。
この制度は出入国管理及び難民認定法に基づき、政府の基本方針および分野別運用方針に従って運用されています。
令和6年3月29日には、自動車運送業を対象とする新しい分野別運用方針が閣議決定され、
さらに法務省出入国在留管理庁と国土交通省により詳細な告示が出されました。
この制度の意義は、単に労働力不足を補うだけでなく、安全性や法令順守を前提に、
持続的に安定した人材確保を可能とする点にあります。
特定技能外国人は、基本的に運転業務を中心とした中核業務に従事することが想定されています。
トラック運転者については「貨物自動車の運行と付随する荷役作業」。
バス・タクシー運転者については「旅客輸送に関する安全運転と接遇業務」と規定されています。
また、車両清掃や点検などの付随業務も可能ですが、これらのみを行わせるのは制度の趣旨に反します。
受入企業は業務内容を適切に設定し、法令に基づいた運行管理を行う必要があります。
外国人が特定技能で就労するには、特定技能評価試験に合格する必要があります。
さらに、業務内容に応じて運転免許の取得が必須とされます。
– トラック運送業:第一種運転免許(普通、中型、大型)
– タクシー・バス運送業:第二種運転免許
特にタクシーやバスでは「新任運転者研修」が必須であり、安全教育、接遇研修、緊急対応訓練などが行われます。
技能実習2号を良好に修了した外国人は、日本語試験の一部免除を受けることができます。
日本語能力は職種に応じて異なります。
– トラック:日本語能力試験N4以上、または国際交流基金日本語基礎テスト合格。
技能実習2号を修了していれば免除可能。
– バス・タクシー:日本語能力試験N3以上。旅客対応があるためより高い能力が必要。
特に接客を伴うタクシーやバスでは、乗客との円滑なコミュニケーションが安全輸送に直結するため、
日本語能力は重要な条件となっています。
外国で取得した免許を日本の免許に切替える「外免切替」が認められています。
ただし、年齢や運転経歴に応じた制限があります。
– 普通免許・準中型免許:18歳以上
– 中型免許:20歳以上、かつ2年以上の運転経験
– 大型免許:21歳以上、かつ3年以上の運転経験
申請時には、外国免許証、JAF等による翻訳文、住民票、写真、在留カードなどが必要です。
【雇用契約と労働条件】
特定技能外国人の労働条件は、日本人と同等以上でなければなりません。
労働基準法、最低賃金法などの遵守は当然であり、違反は資格取消しにつながります。
雇用契約内容は外国人が理解できる言語で明示される必要があります。
また、社会保険・労働保険の加入は必須であり、未加入は不正行為とみなされます。
【受け入れ企業の要件】
・自動車運送業分野の特定技能外国人を受け入れる事業所は、令和5年総務省告示第256号(統計法第28条の規定に基づき、統計基準として日本標準産業分類を定める件)に定める日本標準産業分類に掲げる産業のうち以下のいずれかに掲げるものを行っていることが求められます。
① 中分類43 道路旅客運送業
② 中分類44 道路貨物運送業
・また、自動車運送業分野の特定技能外国人を受け入れる特定技能所属機関は、自動車運送事業(道路運送法第2条第2項に規定する自動車運送事業をいい、貨物利用運送事業法(平成元年法律第82号)第2条第8項に規定する第二種貨物利用運送事業を含む。)を営んでいるほか、一般財団法人日本海事協会が実施する運転者職場環境良好度認証制度に基づく認証を受けていること又は全国貨物自動車運送適正化事業実施機関が実施する貨物自動車運送事業安全性評価事業に基づく安全性優良事業所の認定を受けた事業所を有していることが必要です。
・ タクシー運送業及びバス運送業の1号特定技能外国人を受け入れる場合には、当該業務に従事しようとする外国人に対し、新任運転者研修を実施しなければなりません。
・自動車運送業分野の1号特定技能外国人を受け入れる場合には、当該特定技能外国人に係る在留諸申請の前に、国土交通省が設置する自動車運送業分野特定技能協議会の構成員にならなければなりません。
・構成員は、協議会が行う一般的な指導、報告の徴収、資料の要求、意見の聴取、現地調査その他業務に対し、必要な協力を行わなければなりません。
・また、協議会に対し、必要な協力を行わない場合には、基準に適合しないことから、特定技能外国人の受入れができないこととなります。
・特定技能所属機関が適合1号特定技能外国人支援計画の全部の実施を登録支援機関に委託する場合には、当該登録支援機関は、自動車運送業分野特定技能協議会に加入し、加入後は協議会に対し、また、国土交通省が行う調査又は指導に対し、必要な協力を行うものでなければなりません。
受入企業は、外国人が安心して生活できるよう「支援計画」を作成・実施しなければなりません。
内容は以下のとおりです。
– 日本での生活に関するオリエンテーション
– 日本語学習の機会提供
– 行政手続き、銀行口座開設の補助
– 相談窓口の設置
– 帰国時の手配支援
これらの支援は形式的ではなく、実効性を持たせる必要があります。
自動車運送業分野では、特定技能2号は認められていません。(2025年10月現在)
そのため、外国人は特定技能1号の範囲でしか在留できず、
他分野のように熟練技能者として長期的に就労することはできません。
企業には以下の注意点があります。
– 免許未取得者に運転業務を行わせてはならない。
– 関連業務のみを担当させるのは違法。
– 法令違反や事故発生時には企業責任が厳しく問われる。
– 不正が発覚すれば受入停止や在留資格取消しの対象。
したがって、採用前の免許切替状況や日本語能力確認、教育体制の整備が不可欠です。
自動車運送業における特定技能は、人材不足を補う重要な制度ですが、
安全運転や利用者保護を最優先とする厳しい要件が課されています。
外国人労働者にとっては挑戦が多い制度である一方、
条件を満たせば安定した就労機会を得られるメリットもあります。
受入企業には、適切な教育、支援、法令順守が強く求められています。
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